【創業支援コラム】20251118 11周年 | 高槻・茨木創業サポートオフィス

【創業支援コラム】20251118 11周年

2025年11月、当事務所は開業から丸11年を迎えました。

 

11年間、なんとかかんとか生き延びて来られたのはお客様、当事務所メンバー、当事務所に関係していただいている方々のおかげであり、感謝の気持ちでいっぱいです。

いつもありがとうございます。

 

毎年、この11月のニュースレターでは過去の当事務所の取り組み(失敗事例やそこから学んだこと)を中心にお伝えしていますが、今年も懲りずに同じような内容をお伝えさせていただきます。

 

1.開業前

・サラリーマンとして、超絶ブラック勤務をしていたため、何となく頭の中で開業の事業計画を作る以外は特段の準備をすることなく、税理士業務については顧客ゼロ、人脈ゼロ、税理士業務のブランク7年、個人の貯金数十万円という状況でスタート。

・さすがに事業資金がないので、開業してすぐに日本政策金融公庫から500万円を借入

・開業前に考えた事業計画は、メインの集客方法は人と会ってお客様を紹介してもらうという方法で、サブの集客方法はホームページ(以下、HP)を作って、広告をかけて集客する方法を考えていました。

 

2.開業12年目(20142016年)

・早速、人と会ってお客様の紹介を受けようと思い、交流会などに出席するものの、2ヶ月で挫折。

・毎日のようにたくさんの人と会うのは、私にはしんどかったです

・一方で、サブで考えていたHP集客は、お客様になって欲しい人を絞り込んで広告をかけて、当事務所に興味がある方から連絡をいただくという流れなので、自分にはピッタリの方法でした。

 

【学び】何か一つの方法だけに頼るのではなく、常に代替方法も用意しておくと安心感が増す

 

・そして、HPの集客に注力したところ、幸運にも毎月多数の方々からお問い合わせをいただくことができました。

・売上がゼロだったので、売上を上げようと日本政策金融公庫から借りた 500万円を元手に毎月何十万と広告に注ぎ込んで集客実施。

・その結果、毎月新規でお客様が数人増加するものの、売上の増加は毎月数万円。よって、 「売上広告費=大赤字」かつ「売上広告費諸経費廣岡の最低限の生活費=もっと大赤字」となり、借りた500万円が半年後に100万円以下となり、そのときに資金繰り不安から「人生初の10円ハゲ」になりました。

→サラリーマン時代の超絶ブラック勤務では10円ハゲにならなかった

 

【学び】創業時はもちろんのこと、常にお金は潤沢に持っていた方がいいです(理想は1年間の固定費の半年から1年分のお金を持つ)。自己資金でお金を持とうとしても時間がかかるため、金融機関から借りられる時に借りておくのがいいと考えます。 ただし、無駄遣いしない人限定です。

 

・この広告費への(過剰?)投資によって自己資金が500万が100万円を切ったあと、幸運にも開業から2か月間頑張った「人と会う活動」でのつながりから、公的機関や金融機関からコンサルティングの仕事を紹介いただけたため、なんとか税理士業務の赤字を埋めることができました。

 

【学び】行動し続けていれば、あとから何らかの結果がついてくることがある

 

・開業12年目は税理士業務の売上アップのための赤字を補填するために、コンサルの仕事を詰め込むという状況のため、寝る時間以外(114時間程度)は働いていました。

→もし、今のあなたが同じ状況にあればしばらく頑張りましょう

 

【学び】

・事業を軌道に乗せるまではワークライフバランスという言葉は無視していいと考えます(健康に影響が出ない程度。睡眠時間だけは確保必須)。

・理想は最初から自分が望む労働時間で、自分が望む給与がもらえるくらいの利益を稼げることですが、それは開業直後は無理な人が大半です(そんなことができるノウハウや資産等を持っていないことが大半のため)。

・開業直後の人が持っている最大の資産である「時間」を使って、非効率・非合理な行動をしながら、その行動を改善して、徐々に効率化していくのがベターだと考えます。

 

3.開業35年目(20172019年コロナ前)

・そんなこんなで開業3年目(2017年)になると売上・資金繰りは少しだけ安定してきた結果、私の生産キャパはほぼ埋まりました(追加で新規売上を作るのが難しい状態)。

・でも開業直後に、お金が減っていった記憶があるため、どうしても売上を増やそうという思いから茨木支店開設(受注したあとの生産は根性でなんとかなると思っていた)。

・そして、茨木支店を開設して受注は増えるものの、さらに廣岡の生産キャパが埋まっていき、大変ありがたいことと思いつつも、「もうこのままだと続けられない」と思い、茨木支店は半年で撤退。

 

【学び】開業時の資金繰り不安から必死のパッチで売上・利益の増加を目指すのは良いことですが、最低限の生活費を確保できるようになり、かつ、社長(創業者)の生産キャパが埋まっていれば、単純に売上増加を目指すことから立ち止まって考える必要があります。

 

当時を振り返ったときに、本当は何をすれば良かったかと言うと、

 

・まずは、自分の会社を将来どうしたいかを考える(自分一人もしくは少人数の規模を目指すのか、それとも規模を増やし続けたいのか)

 

ことが大事です。

 

①自分一人もしくは少人数の規模を目指す場合に何をすればいいか

・社長の生産キャパが埋まっているため、まずは既存得意先のうち、不採算(自分の理想の利益が取れていない状態)の得意先から値上げを実施(仮に不採算の得意先との取引がなくなっても社長の生産キャパが空いて、利益が取れる新規得意先を受注できる余地が生まれるため失うものがない)

 

・次に、不採算の既存得意先の値上げと同タイミングで新規見込客へ提示する料金の値上げ(自分の理想の利益よりも更に値上げ)を実施(社長の生産キャパが埋まっているため、受注していいのは今よりも利益が取れる新規客のみ)

・不採算の既存得意先の値上げ、新規見込客へ提示する料金の値上げができれば、そのあとは社長の生産キャパの様子をみながら、生産キャパが埋まりそうであれば、低採算得意先(理想の利益が取れているか微妙な得意先)の値上げを実施

・あとは、社長の理想とする労働時間や利益を鑑みて、新規客の受注停止や新規客・既存得意先の更なる値上げを実施していくのがいいです。

・これを続けることで、社長の理想とする労働時間や利益がでる事業ができると思います。

 

②規模を増やし続けたい場合に何をすればいいか

・まずは不採算得意先の値上げを実施するのが理想だと考えます(ただし、規模を大きくしたいので、売上が下がる可能性があることに抵抗感が大きいと思う)

→当事務所はここができなかった…

 

・上記ができれば、社長の最低限の生活費が確保できて、かつ生産キャパが埋まりそうな半年前に人材採用や外注化を検討するのがいいです(でも、そんな前もって準備はできないので、大半の方が社長の生産キャパが埋まってから人材採用等を進めることになると思います)。

→これも当事務所はできなかった…

 

・最初は何も考えずに、自分の仕事をやってほしいとの思いから、会計事務所の経験者を採用。

・採用したはいいものの、「仕事をどうやって進めるか」という手順書はなく、廣岡も外出が多いため、「分からないことはとりあえず自分で考えてやっておいて」という放置プレイ。

・結果として、採用してもすぐやめていきました(2人連続で1ヶ月以内に退職)

 

【学び】深く考えずに採用活動をしても全く上手くいかない

 

・その経験から、どんな人が入社しても、廣岡の指示がなくても一定レベルで仕事が進めることができるように手順書を作成(通常の仕事で埋まっている上に手順書作成の時間も加わり月300時間超労働)。

 

・また、活躍する人材に入社していただきたいので、採用時点の人の見極めのハードルを高くするために適性検査を導入。

→詳しくは前月25/10月号のニュースレター参照

 

・これにより、会計事務所経験者でなくても、人柄がよく、やる気があって、能力が高い人を募集して採用することができるようになり、徐々にメンバーも増加。

 

・結果、201819年にかけて私の仕事をどんどんとメンバーに移行し、その空いた時間で生産効率を上げようと考え、「資料のデータ化」「社内外のコミュニケーションをチャット(今、使っていただいているチャットワーク)に移行」「生産計画」「工数管理」などの仕組みを作っていきました。

 

4.2020年~2025年現在

・「このままずっと順調に行けるかも」と思っていたのですがコロナ禍突入。

2020年、コロナ流行により一番影響があったのが当社の一番集客の柱だったHP集客です。 コロナによって、WEBで集客する競合が増え、かつ、競合ではなかったマネーフォワードやfreeeWEBで積極的に広告宣伝し始めたため、当事務所のHP集客が激減

・開業時から続けていたもう一つの集客媒体であるDMを強化しようと考え、商品を変えて、DMエリアを拡大することによって、幸運にもHP集客の減少をカバーできました。

 

【学び】集客媒体は1つに絞らずに、常に複数個持っておいた方がいい

 

・以後、集客方法の開発を1年に複数個ペースで実施して、1個がダメでも、他の方法があるという状態を作ろうとしてます

 

・もう一つ、開業からは税理士事業とは別にコンサル事業もやってきたのですが、コロナの影響で簡単に融資や補助金が出たために受注が減少

・コンサル事業の時間の減少分を税理士事業に充てることで、コンサル事業の売上減少分を賄うことができた

 

【学び】理想的には、事業は複数あった方がいい

★現在、既存事業が1つで、かつ、利益が潤沢に出ていない場合に新規事業に取り組むのはお勧めしないです(新規事業開発は数年間は大赤字になる可能性が高く、かつ、うまく事業が立ち上がるか不透明なため)

→まずは得意先数を増やして少数の得意先に依存しない体制を作り、その上で集客経路を複線化することをお勧めします。

 

・メンバーとはコロナ前から1か月に1度の面談(社内では1on1MTGと呼んでいます)をして、メンバーが何に困っているか等を把握

・コロナ禍で完全在宅勤務体制に移行したため、1か月に1度の1on1MTGだけではメンバーの様子がよく分からない状態になり、決算書みたいに数値でメンバーの状況を把握したいと考え、エンゲージメントサーベイを導入(当事務所はwevoxを利用)することで、メンバーのことがよく分からないという不安を少しだけ軽減できました。

 

・なんとかかんとかコロナ禍もやってこれたのですが、25/9月号のニュースレターでお伝えした通り、2024年からgoogleAI overview導入でさらにHP集客が減少し、かつ2025年からDM集客も原因不明の激減。

・まずはDM改善に取り組み、現状は何とか元に戻った状態となっています。

 

【学び】時間の経過とともに、競合や社会環境の変化に伴い事業が悪化するので、原因分析と改善をやり続けないと現状維持すらできない。

 

毎年、色々な出来事がありますが、これからも様々なことにチャレンジして、その反省や学びをあなたと共有することで、少しでもあなたのお役に立てればと思っております。

 

引き続き、よろしくお願い申し上げます。

 

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